「明和義人伝~モダンタイムズ ep~」第5回 : 相澤俊一さん

プロフィール

相澤俊一さん
都市再生推進法人 新潟古町まちづくり株式会社 業務部長 / 新潟中心商店街組合事務局長 / 新潟市商店街連盟(事務委託)事務局長

新潟県上越市高田出身。

53歳で早期退職し、新潟市にUターン。協同組合新潟市商店連合会(現・協同組合NICE新潟)に就職し、新潟市共通商品券や当時新潟市が発行したプレミアム付き商品券発行業務に携わる。65歳で定年退職。その後、商品券発行業務で親しかった本町・古町の方々に呼ばれ、新潟中心商店街㈿の事務局長、都市再生推進法人新潟古町まちづくり㈱の業務部長として再就職。組合の経営や、イベント運営など幅広く携わっている。直近では日本海ドームシテイプロジェクト新潟市民の会の運営委員。2023年の「明和義人祭」で、岩船屋佐次兵衛役を務めた。

50代で日本を代表する企業を早期退職し、Uターンした新潟市で街づくりに関わる相澤俊一さん。
新潟市古町を拠点とし、中心市街地の地域の活性化に取り組んでいらっしゃいます。
明和義人祭では「岩船屋佐次兵衛」役を務めた相澤さんに、お祭りの感想やご自身が関わっている業務や、まちづくりへの思いをお聞きしました。

明和義人祭を知ることで、まちの課題がより明確に

2023年の明和義人祭では「岩船屋佐次兵衛役」役で参加をされました。参加してみての印象はいかがでしたか?

 

相澤:
お祭り全体の雰囲気はとても良かったですね。初めて参加してみて、コアなファンがいるお祭りだということにも気付かされました。学生さんや子どもたちの楽しそうな姿が印象的でしたね。ちょうどその日は、新潟市内で他にもイベントがたくさん開催されていたようで、思っていたよりもマスコミが少なかったのが、ちょっと残念だったかな。来年はもう少しマスコミを呼んで人を呼び込むのが課題かもしれませんね。

 

 

岩船屋佐次兵衛は物語の中で、ちょうど相澤さんと同年代だそうですね。

 

相澤:
「年配の人」ということは分かっていましたが、当時の年齢を調べたら70歳近くだったんですね。私が今71歳なので、あぁ同年代だったのかと(笑)。新潟らしく自治ができたというのは、本当に素晴らしいことだと思いますし、その伝統は今でも新潟市で続いているかというと…どうかな?と思う部分も少しありますよね。そういう意味で、政治任せになっている現状を変えていくためにも、明和義人のように町で暮らす私たちが声を上げていくことが大事なんじゃないかと改めて感じました。お祭りを通して、まちの課題が明確になったかもしれませんね。

大企業から自分の声が届く小さな組織へ

相澤さんは上越市高田のご出身です。新潟市で現在の仕事に関わることになった経緯は。

 

相澤:
高田で生まれ育って、大学卒業後に最初に勤めたのが、新潟ソニー販売株式会社でした。今はもうない会社ですが、2040代までは新潟、長岡、大宮で働いて、マーケティングに関わる業務や量販店への営業といろんなことをやりましたね。最後は単身赴任で大宮に長く勤めて、早期退職制度という制度が出てきたので喜んで飛びつきました(笑)。もうね、大企業で働くのはいいかなと思っていて、次に働くなら自分の声がしっかり届くところがいいと思っていました。家族がいる新潟市に戻ってきたのは53歳の時。いろんな仕事を探している中で、興味を持ったのが現在の「協同組合NICE新潟」(※以下、NICE新潟)です。ちょうどその頃、NICE新潟は新潟市共通商品券の普及に努めている真っ只中。地域経済や地域振興に関われることにも関心を持ちました。

 

前職とは全くの異業種ですね。

 

相澤:
就職支援会社の方には「商店街に関わるなんてやめておいた方がいいですよ。あなたのような大企業に勤めた人には勤まりません。斜陽産業です」と大反対されました(笑)。当時のNICE新潟は私を入れて従業員がたった3人。でも、規模が小さいほど、自分の声が届くじゃないですか。従業員3,000人、4,000人規模の大きい会社は、ちょっとやそっとじゃ自分の声なんか届かないのはわかっていましたから。自分の声で変えていける場所をあえて選んだ訳です。

 

新潟市・佐渡市共通商品券は発行数日本一を誇るそうですね。

 

相澤:
JCBやVISAといった共通商品券にはかないませんが、おかげさまで地域で流通させているものとしては毎年8億円を超える発行で、全国一といわれています。現在、加盟店は百貨店からショッピングモール、スーパーやホームセンターから、個人営業の飲食店や美容室、新潟市内のタクシー会社や佐渡汽船なども合わせて1,800店ほど。私が入社してからは、クレジットカードの包括加盟なども行って、小さな規模のお店でもキャッシュレス化の対応ができるようにするなど組合として取り組んできました。

商店街の力を集結して、まちづくりの基盤に

NICE新潟での活動の後も、新潟中心商店街協同組合の事務局長としても、商店街の活性化に取り組まれています。新潟中心商店街協同組合ではどのようなお仕事を。

 

相澤:
新潟中心商店街協同組合は8つの商店街団体が創った事業協同組合で、組合幹部の皆さんはご自分のお店と直属の商店街組合があり、更に地域を束ねている新潟中心商店街協同組合で地域全体のイベントやまちづくりを行っています。私は新潟中心商店街協同組合の事務局長として各団体の意見のとりまとめや全体で行う事業の運営や管理を行っています。

 

商店街を組合として取りまとめることの強みは?

 

相澤:
外から見ると、古町は一つの大きな商店街に見えるかもしれませんが、それぞれの番町に商店街の組合があるんですね。細分化されつつも横の連携が取れていることも強みですし、番町を跨いで連携というのもあります。新潟市の補助金などを受ける際も何番町単体だと受け付けてもらえないこともありますが、新潟中心商店街協同組合のように複数の組合が連携すると受け付けてもらえる場合もあります。また、古町のアーケードって誰のものだと思いますか?新潟市のものだと思われる方も多いと思いますが、あのアーケードはそれぞれの商店街がお金を出し合って造り、維持管理しているものなんです。アーケードだけでなく道路と歩道の路面がバリアフリーにできているのも、商店街として取り組んだもの。「みんな行政にやってもらったのでは?」と思われることって、意外と商店街単体や複数の商店街が連携して、まちづくりに関わっていることが非常に多いんです。自分たちで課題を見つけて、自分たちで解決していく、足りない部分は行政に補ってもらう場合もありますが、組合の存在はそういった部分にも働きかけているんです。

 

一方で、古町が抱える課題については、どのように捉えていらっしゃいますか。

 

相澤:
一番大きな課題は、古町に住んでいる人が少ないということでしょうか。住んでいる人がいなくなると、まずなくなるのが八百屋や鮮魚店といった生鮮のお店ですが、古町はそれが顕著。ですが、追い風な部分もあります。古町周辺にもマンションが幾つかでき、三越の跡地にも37階建ての複合タワーが建設されますし、現在抱える課題の解消の後押しになるのではないかと期待しています。

新潟市のさらなる発展を見据えた活動にも寄与を

商店街の活動の傍ら、「日本海ドームシティプロジェクト」の運営委員としても活動されています。

 

相澤:
2021年6月に立ち上がったプロジェクトですが、新潟県でのプロ野球球団の誕生による「ドームシティ」の実現を目指しています。実現すれば本州の日本海側では初となります。新潟市陸上競技場の跡地など、新潟市の中心部にドームを造ることが検討されています。新潟は野球好きな人が多いといわれる県なんですよね。郊外ではなく街なかにつくることで既存の交通インフラの活用や中心街の更なる発展が期待できますし、新潟市の発展にも寄与することでしょう。

 

明和義人祭に対すること、メッセージをお願いします。

 

相澤:

地域の子どもたちをもっと参加してもらうのはいいと思うんですよね。実際のお祭りでは大学生や専門学校生が主体となっていましたが、小中学生といった次世代を担う人たちに語り継いでいきたいものです。せっかく素晴らしい歴史があるのに教科書には載っていないし、これからの時代を生き抜く子どもたちにこそ、明和義人の精神や独立心は育んでもらいたいものです。まずは周辺の小学校の子どもたちにお祭りに楽しく参加してもらい、明和義人について学ぶ機会を大人が率先してつくっていって欲しいですね。

「明和義人伝~モダンタイムズ~ep」とは

明和義人祭にて主人公を演じていただいた方に感想やご自身についてのエピソード(ep)をお伺いし具体的な活動内容を紹介します。明和義人を知るきっかけとなり新しいことを始めようとしている方の一助となれれば幸いです。