現在の研究、活動について教えてください。
伊藤:
個人の研究としては、起業家精神(アントレプレナーシップ)に関する理論構築を目指す研究を主軸としています。学生時代から継続しているものとして、海外アウトソーシング(オフショアリング)現象の研究も行っています。また、オフショアリングの研究の流れにあって、そこにアントレプレナーシップの研究をミックスして考えた私独自のテーマなんですが、顧客側のアントレプレナーシップという意味で「カスタマーアントレプレナーシップ」の研究も進めています。ゼミとしては、アントレプレナー(起業家)とマーケッター、戦略家の育成を教育のベースに、企業とのコラボレーションで経営課題の解決や商品開発などを通じて、地域の企業の活性化にも関わっています。
大学時代は商学を学んだそうですね。そのきっかけは。
伊藤:
私の父が西南学院大学の商学部で教授をしていたこともあり、どんな道に進むにあたっても、ビジネスを学ぶのは今後の役に立つだろうと考えていたんです。その一方で、私は幼い頃からインディ・ジョーンズシリーズが大好きで、考古学者・冒険者としてフィールドワークを行いながら生活をするスタイルに憧れていました(笑)。大学教授という仕事は一般的ではないのかもしれませんが、私にとってはとても身近なものでしたね。大学卒業後は早稲田大学大学院、商学研究科修士課程で2年間学び、博士課程に入って産業経営研究所で助手を2年経験しました。
新潟大学に着任されたのは2009年です。当時はどのような指導を。
伊藤:
実は新潟には縁もゆかりもなかったのですが、就職先として探していた際に条件がマッチしたことを機に赴任することになりました。当時の指導は大学時代に入っていたゼミに倣って、経営やマーケティングに関する本の輪読形式をとっていたんです。でもある日、このやり方って自分がいなくてもできるかもしれないとふと思いました。学生たちに、うちのゼミに入ったからこそ得られる知識を与えたいと思いました。そのタイミングで慶應義塾大学からビジネスコンテストの案内が新潟大学に届いたんです。東日本大震災の直後で、被災地を復興させるビジネスアイデアの募集だったのですが、当時のゼミ生の中に地元が大変な思いをしている学生がいて、ぜひ参加したいと。応募したら書類選考を通過して、本選の中間審査にも残りました。本選に登壇しているのはいわゆる有名大学の学生ばかり。その中で新潟大学のうちのゼミ生が突破したのを見た時に「もしかしたら育成の仕方によっては、こういう学生がもっと出てくるのでは」という予感がしました。